私は今30代後半だが,自分の老後を考えると,あまりイメージが持てないでいた.今の暮らしから仕事が除かれただけ,としか想像できなかった.しかし,この数年間で60代以上の人たちの話をいろいろと聞いてきて,イメージが具体的に変化してきた.どうやら,思いの外,老後は色鮮やかで豊かなものになりそうなのである.
老いると,まず体力が落ちる.今は漲っているから実感できないけど.体力が落ちると気力も落ち,行動が減り,意思も減る.そうすると1日ですることが減る.得られる刺激も減る.とはいえ,増え続けるものもある.思考や知恵や思い出の強度だ.自分を大切にするようになるからだ.1日を大切にする気持ちは,若い今より増しているとすれば,老いたら幸せが減るのではなく,むしろ増すだろう.
次に,資産残高が減る.収入が多く得られなくなる.健康のため軽い仕事に携わるにしても,今より給与は減る.しかし,老いると支出も減る.欲する頻度が減り,必要な物も減るからだ.減っても充分なくらいの給与はもらえるのなら,生活は難なくできるどころか,むしろ豊かに過ごせる.仕事しない自由な時間も得られるので,好きなことに惜しまず時間を使える.それが人生だと思える趣味だ.
最後に,知人が減る.お世話になった人や仲良くしていた人が,天国へ行く.それで寂しくなるかもしれない.でも,地域の団体や教会や趣味の仲間を複数持っていれば,それほど孤立はできないものだし,ウェブで受発信しているだけで孤独にはそうなかなか陥らない.例えば,図書館で似た関心を持つ人がいたら話しかけてみる,それが笑顔で許される年代だと思う.何気ない会話をして去るのだ.
私は幸い趣味が多い.追究したいテーマがいくつもある.それがどんなものか知っていきたい気持ちも持ち続けている.好奇心の源泉はそう簡単に枯れない.これから40代,50代と仕事する中で,老後を想像する時はあるだろう.でも,徐々に近づき,具体化していくにつれ,希望は増してくる.100歳まで生きることは想定できないが,召天するまで問題なく生きられる自信が固くなっていく一方なのだ.
本日の積読
「幸福論 第二部」ヒルティ著